業界業種を問わずビジネスを展開する以上、顧客からのクレームは避けて通れません。コールセンターには日々、さまざまな意見が寄せられますが、クレームには商品開発やサービス向上のヒントが隠されていることもあります。この記事では、コールセンターでの電話対応を指導する立場の方に向けて、クレーム対応の基本から具体的な手順、注意点まで解説します。
目次
1.クレーム案件とは?
2.クレーム対応の基本
3.クレーム対応の手順
4.クレームを対応するときの注意点
5.クレームを出さない組織作りをする方法
6.まとめ
1.クレーム案件とは?
本来、クレーム(claim)は「賠償や保証を要求する」という意味であり、「苦情」とは別物とされます。苦情には顧客の不平や不満といった心理や感情の要素がありますが、クレームにはありません。しかし、現在の日本では「クレーム」と「苦情」は同じ意味で使われています。
日本で「クレーム案件」にあたるときに肝心なのは、不平不満を抱えている顧客に対する真摯な対応です。相手の感情に寄り添いつつ、法律や企業ルールに則りながら、柔軟で人間的な対応が求められます。
2.クレーム対応の基本
クレームの一次対応の基本は、顧客の声に耳を傾け、お詫びすることです。顧客に直接対応するときは、真摯な態度と受け答えを心がけましょう。このとき、オペレーターには「クレームは自分個人に向けられた問題ではない」と指導することも大切です。
クレームはあくまで会社やサービス、商品に対する意見です。コールセンターの管理者は、オペレーターが自分事として受け止めて、委縮したり、喧嘩腰になったりしないよう注意しましょう。クレーム対応後は、一次対応をしたオペレーターの対応内容やメンタル面をフォローします。
3.クレーム対応の手順
ここでは、コールセンターを中心としたクレーム対応の手順を紹介します。
1.お客さまの話を聞く
クレーム対応の第一段階はヒアリングです。相手の話をよく聞いて「何が問題なのか」「顧客は何に怒っているのか」などを見極めましょう。あいづちやクッション言葉を使いながら、顧客の声を受け止めているという誠意を伝えることも大切です。メールやチャットで対応する場合は、話し言葉と書き言葉の違いにも注意しましょう。
2.お詫びを伝える
初期不良や発送ミスなど企業側の責任が明らかな場合は、より誠意を込めて謝りましょう。仮に顧客側に非や間違いがあったとしても、不快を感じさせたことに対して謝罪するのが基本です。ただし、クレーム内容の事実確認ができていない場合は、その部分に関して謝る必要はありません。言質(後に証拠となる言葉)を取られる形で自社や店舗の不利益にならないよう冷静に対応しましょう。
3.自分で対応可能な案件か考える
クレームの内容を把握したら、顧客が求める対応を具体的に検討します。すべてのクレームを現場で対応するのは不可能なので、組織全体で協力する必要があります。「自分で判断できるのはどこまでか」「対応できない場合はまず誰に報告するのか」などをマニュアルに記述しておきましょう。
4.法律と自社ルールに則った対応をする
解決案や代替案を実行する前に、案の内容が法律や自社のルールに沿っているかチェックします。法律の範囲を超えた要求には、当然応える必要はありません。注意が必要なのは、現場レベルで安易に対応を請け合ってしまうことです。自社ルールやマニュアルの遵守を周知しておきましょう。法律の専門家に相談できる体制を整えておくことも重要です。
5.会話やチャットを終えるときは謝罪と感謝を伝える
クレーム対応を終えるときは、もう一度お詫びを伝えます。また、「貴重な意見をありがとうございました」など感謝を伝えることも大切です。お礼を言われた顧客は企業への印象がよくなり、最後の締まりもよくなります。ほかにも、「以後このようなことがないように致します」や「今後とも弊社をよろしくお願いいたします」などのフレーズがあります。
4.クレームを対応するときの注意点
ここでは、顧客に直接対応するオペレーターやスタッフが知っておきたい、クレーム対応の注意点を紹介します。
相手の話を遮らない
クレームの連絡をしてきた顧客は、不満を吐き出したい、誰かに話を聞いてほしいという心理にあることが多いです。そのため、あいづちやお詫びを述べるのはよいですが、相手の話を遮らないようにするのが基本です。対応する側としては、事実確認として5W2H※などを聞き出したい場合もあるでしょう。しかし、相手の話す順序やペースに合わせることが重要です。
※When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、How(どうする)、Why(なぜ)、How Much/How Many(いくら、いくつ)
憶測や曖昧な返事はしない
クレーム対応において、「多分~でしょう」「~と思います」という、あいまいな返答は避けるべきです。顧客の要望には、「できる・できない」をしっかり確認してから返答しましょう。「多分」「おそらく」といった考えで対応しても、状態が復旧しなかったり悪化したりすれば、さらに怒りや不満が増してしまいます。
相手の間違いは指摘しない
「使い方が違います」「説明書に書いてあります」など、相手を指摘するような表現は避けましょう。言い訳をするのもよくありません。誠意が疑われるうえ、顧客は自分の意見が聞き入れられていないと感じてしまいます。これではかえって火に油を注ぎ、クレームが長引いてしまいます。相手の間違いは可能な限り肯定的に表現して、解決案に誘導しましょう。
メールやチャットでの対応は言葉遣いに配慮する
対面や電話と違った難しさがあるのが、メールやチャットによるクレーム対応です。お互いの顔が見えない分、相手の人柄や性格、感情がわかりにくいうえ、丁寧語・尊敬語・謙譲語などを使い分ける必要があります。オペレーターには、日本語の使い方やビジネスマナーなど、正しい対応スキルが求められます。
相手の気持ちや立場に寄り添って考える
感情が高ぶっている顧客には、言い分や立場に共感している態度を示しましょう。顧客は自分の気持ちを理解してくれていることがわかると、次第にクールダウンしていきます。逆に、焦りや苛立ちで事務的な口調になったり感情的な態度になったりすると、クレームがヒートアップしかねません。
顧客の立場に寄り添ったクレーム対応は、サービスの品質向上だけでなく対応時間の短縮にも効果的です。
相手を長時間待たせない
電話やチャットがなかなかつながらないような状況では、顧客の不満は募る一方です。すぐに対応できない場合は、いつまでに連絡できるかなどを伝えていったん区切りを付けましょう。システム上でも、「自動音声で回線の混雑を伝える」「着信履歴から折り返し連絡する」「AIチャットボットと有人チャットを併用する」といった機能を活用するのが効果的です。
自分が怒られているわけではない
クレーム対応をするオペレーターにはストレスがかかります。スタッフには「個人に怒っているわけではない」と理解してもらうことが重要です。相手は商品やサービス、会社の体制を指摘しているということをしっかり伝えましょう。また、怒鳴られて萎縮したり、逆に感情的に反論したりせずに、冷静に対応する方法を教えることも必要です。
5.クレームを出さない組織作りをする方法
ここでは、クレーム対応に強い組織づくりをするポイントを紹介します。
マニュアルやクレームの事例は周知徹底する
クレームは、誰でも同じように対応できるのが理想といえます。マニュアルで、業務フローやクレームの事例などを共有することも1つの方法です。また、企業ポリシーや責任者・担当者の所在は明確にしましょう。業務を一元化して責任を明らかにすることで、対応ミスは減り、被害も最小限に留めることができます。
対応履歴は必ず残す
企業にとってクレームは避けたいものですが、見方を変えれば貴重な「顧客の声」ともいえます。社内には「どのようなクレームがあり、どのように対応したか」を記録した「クレームカルテ」を作成してデータベース化しましょう。データを蓄積していけば、問題点や課題を分析できるようになり、新人オペレーターの教育や、商品の開発・改善にも役立てられます。
クレームは組織全体で対応する
クレームは社内で共有して、どのような問題が発生しているのかを全員で認識し、再発防止につとめましょう。録音した音声をテキストデータ化するシステムなどを導入すると、効率よくデータを収集できます。「別部署の問題だから関係ない」「不在だったからよく知らない」とならないよう、組織全体で情報共有できる体制を構築していきましょう。
チャットシステムで企業や顧客の負担軽減を行う
近年、接客やクレーム対応の手段としてチャットシステムを導入する企業が増えています。チャットシステムは文字でのやり取りのため、オペレーターのストレスが軽減できます。論理的で建設的なコミュニケーションとなり得る点もメリットです。履歴を確認すれば対応を振り返られるので、「言った・言わない」のトラブルも発生しにくくなります。
6.まとめ
コールセンターでの業務には、さまざまなストレスがあります。オペレーターの離職を防ぐには、ストレスを軽減する対策が必要です。コールセンターの業務を効率化してストレスを減らすには、チャットシステムの導入がおすすめです。
クレーム対応の基本は顧客の気持ちや立場に寄り添うことです。また、クレームカルテによる情報共有や、チャットシステムの導入など、クレーム対応に強い組織づくりも大切です。
NTTビズリンクのチャット応対ソリューションは、自動応答システムと有人チャットのスムーズな切り替えができるハイブリッドシステムが特長です。窓口が違う場合も1つのシステムに統合できる「マルチテナント」の運用により、大幅な業務効率化も実現できます。コールセンターの品質向上をお考えの方は、ぜひご相談ください。
この記事の執筆監修者情報
監修者:エヌ・ティ・ティ・ビズリンク株式会社
NTTビズリンクは、企業向けデータセンターサービスを提供する会社として2001年7月にスタートしました。
その後テレビ会議多地点接続サービス事業などの統合により、お客さまのクラウド・アウトソーシングニーズに応える為に、統合的なICTアウトソーシングビジネスを展開してまいりました。 現在、設立以来培ってきたデータセンターサービスとテレビ会議サービスの運用力を強みとして展開している、Communication&Collaboration Solutionsという新たな事業領域の1つとして、「コンタクトセンターソリューションサービス」をご提供しております。
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