
近年、さまざまなデジタルツールの登場により、従来は困難とされてきた業種・職種においてもテレワーク化が可能になりつつあります。
コールセンターもまさにそうした業種のひとつで、十分な準備とトラブル対策をおこなうことによりテレワーク化を実現することができます。
そこで、本記事では次の3つの視点から、コールセンターをテレワークで実現するための方法について紹介していきます。
コールセンターのテレワーク化に必要なツールは何か
テレワークを実現した場合に考えられるトラブルはあるか
コールセンター業務を安心してテレワーク化する方法とは
コールセンターをテレワークで実現する方法とは

従来、コールセンターをテレワーク化する場合に最大の障害とされていたのが、セキュリティです。ときに数百人規模のスタッフ数となるコールセンターは、大量の個人情報を取り扱うリスクがあることから、テレワーク化が困難とされてきました。
しかし、近年はセキュリティの問題を解決できるICT技術が発展したことで、コールセンターを完全にテレワークで実現することが可能となっています。
実際に、スイスに本社を置く大手保険会社が、日本に置く支社・支店すべてのコールセンターの完全なテレワーク化を実現するなど、成功事例も少なくありません。
(参考URL:https://diamond.jp/articles/-/235786)
また、最近では、新型コロナウイルスへの対応として、コールセンターのテレワーク化を推進する企業が増えつつあります。
新型コロナウイルスに関連して在宅型コールセンターを検討している方は、下記のホワイトペーパー「在宅型コールセンタースタートアップガイド」もぜひご一読ください。
ここからは、コールセンターをテレワークで実現するための方法について、3つのポイントに分類して解説していきます。
テレワークでの勤務体制の確立
テレワークでコールセンター業務を行う際の問題点のひとつが、各スタッフの労務管理が難しいことです。
スピーディーな顧客対応を求められるコールセンターの業務は、勤怠管理に加えてスタッフの教育や育成が欠かせません。そのため、スタッフ管理方法や勤務体制、トラブルが生じた際のサポート体制などを、テレワークに馴染むように落とし込むことが重要です。
具体的には、こうした課題は次のように解消することができます。
・ビデオ通話ツールを利用したスタッフ教育・育成
・チャットツールやビデオ会議を活用したサポート
・システム・契約内容の見直しによる勤怠管理
たとえば、スタッフの教育や育成は、専用のマニュアル提供とビデオ通話(複数名のときはビデオ会議)を利用することで、テレワークでもリアルタイムでの実施が可能です。また、勤務中はビデオ会議やチャットを起動させておくと、トラブル時には即座にサポートすることができます。
勤怠管理については、専用のツールを使用するほか、契約内容自体を見直す方法もあります。具体的には日給や月給ではなく、時給契約や完了インシデント件数に応じた報酬支払いへの変更です。
このように契約を見直すことで、1日あたり数時間程度しか働けないという人材を採用することも可能になるため、人手不足の解消も期待できます。
その際には、完了インシデント件数に応じた契約の場合は雇用ではなく個人事業主への業務委託に該当する可能性があるため、法務部門に確認しておくようにしましょう。
クラウド型CTI※の導入
今やコールセンターに欠かせない存在となっているCTIですが、最近ではオンプレミス型に加えてクラウド型も登場しています。
※クラウド型CTIとは、コールセンター業務で必要となる主な機能(PC・電話・FAX)を統合させたCTIシステムを、クラウド上で利用できる形態にしたものです。
自社サーバーを使用せず、専用のソフトウェアをPCにインストールするだけでスピーディーに利用開始できるため、導入までの手間やコストを抑えられるメリットがあります。
また、インターネット環境があれば出社時と同様のシステムが社外でも利用できるため、コールセンターの業務内容を大きく変更することなくテレワーク化を実現できます。
なお、クラウド型CTIを導入する際の注意点として、自社の連携システム(IP-PBXなど)との互換性を確認することをおすすめします。
マニュアルやナレッジ共有場所の確立
コールセンターでは日々寄せられるお客さまからのお問い合わせに対し、的確かつスピーディーな応対を求められます。
テレワークの環境下で出社時と同様のサービス品質を維持するためには、対応マニュアルの作成はもちろん、日々更新されるナレッジの共有も欠かせません。これらを全スタッフが適宜確認できるよう、センター内共通のグループウェアを活用するなど、マニュアルやナレッジの共有場所を作成・周知する必要があります。
特にナレッジは属人化しやすい傾向にあるため、たとえばFAQ形式などにより、情報共有することが重要です。
テレワーク化した際に考えられるトラブル

コールセンター業務に限らず、多くの企業が業務のテレワーク化に二の足を踏む理由として、トラブル対応への懸念があります。
トラブルの内容によっては莫大な損失や企業存続の危機につながりかねないため、テレワーク化を進めるうえで可能な限りの事前対策が必要です。
コールセンターのテレワーク化を実現した場合、十分に想定しておくべきトラブルとして、情報漏洩とサービス品質の低下の2つがあります
機密情報が漏洩してしまう
独立行政法人情報処理推進機構が公開した「情報セキュリティ白書2019」によると、情報漏洩の原因でもっとも高い比率を占めているものは誤操作です。次いで紛失や置き忘れ、不正アクセス、管理ミスといったものが続きます。
(出典:独立行政法人情報処理推進機構「情報セキュリティ白書2019」)
また、上記のうち2018年の情報漏洩事件で多くの被害件数となった事例の大半が不正アクセスや管理ミスによるものでした。いずれもコールセンター業務の中でも起こる可能性のあるトラブル原因です。
そのため、情報漏洩を防ぐためには、高いセキュリティで守られたツールを使用し、スタッフひとりひとりの教育を徹底することが欠かせません。
ツールへの習熟不足や情報の共有不足によるサービス品質の低下
コールセンターのテレワーク化を実現するためには、次のような準備が必要です。
・業務に必要なハードウェアの貸与(ヘッドセットなど)
・業務に必要なソフトウェアの提供
・テレワークのためのインフラ整備
・セキュリティの高いインターネット環境
ここで注意したいのが、前述したように誤操作の問題です。テレワーク中の誤操作を未然に防ぐためにも、ハードウェアなど業務上必要となるものは会社支給を徹底すべきです。具体的には、ヘッドセットや電話、PCに加え、グループウェアやCTIへ安全にアクセスできるセキュリティの高いインターネット通信機器などが該当します。
導入時はスタッフにヒアリングを行い、必要と感じるものを可能な範囲で支給しましょう。このようにスタッフが働きやすい環境や安心してテレワークできる環境を整えることで、ツールや情報不足によるサービス品質の低下を防ぐことにつながります。
専門家に相談して、トラブルの起きない導入を

ここまで紹介してきた要素を押さえることで、従来困難とされてきたコールセンターのテレワーク化を実現することができるでしょう。
一方で前述した通り、ほかの職種をテレワーク化する場合以上に、情報漏洩などセキュリティ面の問題やサービス品質の低下に注意しなくてはなりません。
そして、セキュリティやサービス品質といった課題をクリアしつつ、コールセンターのテレワーク化を実現しようとした場合、運営担当者には大きな業務負担がかかることになるでしょう。
この記事の執筆監修者情報
監修者:エヌ・ティ・ティ・ビズリンク株式会社
NTTビズリンクは、企業向けデータセンターサービスを提供する会社として2001年7月にスタートしました。
その後テレビ会議多地点接続サービス事業などの統合により、お客さまのクラウド・アウトソーシングニーズに応える為に、統合的なICTアウトソーシングビジネスを展開してまいりました。 現在、設立以来培ってきたデータセンターサービスとテレビ会議サービスの運用力を強みとして展開している、Communication&Collaboration Solutionsという新たな事業領域の1つとして、「コンタクトセンターソリューションサービス」をご提供しております。
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