映画をみるのはもちろんテレビ会議にもハイクオリティな動画は欠かせません。しかし高品質を追及していくと際限なくコストがかかってしまいます。本稿では画質はどの程度までこだわるべきか解説します。
1.フルHDとは?HDや4Kとの違い
フルHDには二つの意味があります。
一つはデジタルテレビ放送の規格の一種で、走査線が1080ピクセル以上、あるいは解像度1920×1080以上のものを指します。
これにはテレビ局がデジタル放送をする際、撮影した動画を電波に乗せる手順が関係しています。
まず放送したい動画を1秒間につき60枚の静止画に分割します。そして静止画1枚1枚を横方向に1080本の線で分割します。この横線を「走査線」といいます。
次に横に1080分割された走査線を更に1920個の画素(ピクセル・ドット)に分割します。これで横に長い帯から粒(画素)ができました。画素一つ一つの点の色や明るさを電気信号に変換しているのです。
この情報をテレビモニターに反映させるには、分割された走査線やピクセルの数と同等以上の表示機能が必要とされます。これがフルHDです。
受信機(テレビモニター)のスペックが低いと放送されている情報を反映したクオリティを再現できませんし、逆にいくら高性能なテレビでも送信側のクオリティ以上の映像にはなりません。
もう一つのフルHDはfull high definition televisionの略称で1920×1080の画面解像度を持つモニター(ディスプレイ)のことです。通常、フルHDというと画面解像度の意味で使われるケースが多く、HD(high definition television)は1440×1080、4K(4K resolution)は3840×2160の(テレビ)モニターを指します
なお、現時点において4Kのスペックに対応したコンテンツは数が少なく、BSなどごく限られたチャンネルしか4K放送に対応していません。4K対応のディスプレイで通常のテレビ放送を見ると過剰品質だと言えます。
更に8Kという規格もあり、すでに一部で放送が開始されています。ただし8K放送は4Kよりも更にコンテンツ量が少なく、ディスプレイ自体も非常に高額です。
4Kが一般化するまでまだしばらく時間がかかりそうですし、その前に8Kを導入しても宝の持ち腐れになります。コストパフォーマンスを考慮すればハイスペックすぎるモニター導入は待った方が良いかもしれません。
2.画面解像度とは?HD、フルHD、4Kの解像度数値比較
液晶ディスプレイにはさまざまな表示形式がありますが、基本的な仕組みとしては二枚の透明電極付きガラス基板で液晶を挟みこみ、背後から光を当てています。ガラス基盤から挟みこまれた液晶に電圧をかけることで液晶分子の向きを変化させるのです。
液晶は角度が変わると光の透過量が変化して、目に見える色が変わります。色は光の反射だからです。つまり液晶に光を当てながら電圧をかけることで、液晶の向きを変化させて色を作りだすのです。
PCモニターやテレビモニターに使われるTFT液晶も基本的には同様の原理で動いていますが、多数の「画素」で構成されており、画素一つ一つは色を作りだすために複数のサブ画素で構成されている点が大きく異なります。
この無数の点となった液晶(ドット・ピクセル)一つ一つが色を変えることで、意味のある映像を作りだします。
そして画面解像度とはモニター(ディスプレイ)が何個の点(ドット・ピクセル)で構成されているかを示す指標です。
HD、フルHD、4Kは画面解像度による画素数の違いを表しています。
・HD:1440×1080ピクセル
・フルHD:1920×1080ピクセル
・4K:3840×2160ピクセル
この数値が大きければ大きいほど、細かい画像をきれいに映し出すことができるので高性能だと言えます。
3.スマートフォン、タブレット、テレビ、モニターの画面解像度のトレンドと選び方
iPadの場合、2012年以降はフルHD相当の画面解像度となっており、2020年に至るまで大きな変化はありません。第7世代が若干進歩しているように見えますが、ディスプレイが大きくなったのが原因なので基本的なモニターのスペック自体は変わりません。
ハイエンドモデルであるiPad Proは2015年以降の登場なので、サイズによって若干のバラつきはありますが通常のiPadと同様にフルHD相当となっています。
iPad Pro(第1~4世代共通) | 2,732 x 2,048ピクセル(12.9インチディスプレイ) | |
2015年 | iPad Pro(第1世代) | 2,048 x 1,536ピクセル(9.7インチディスプレイ) |
2017年 | iPad Pro(第2世代) | 2,224 x 1,668ピクセル(10.5インチディスプレイ) |
2018年 | iPad Pro(第3世代) | 2,388 x 1,668ピクセル(11インチディスプレイ) |
つまりスマートフォンやタブレットはフルHD相当が約5年前から現時点までのトレンドだと言えるでしょう。
テレビやPCモニター関連もかなり早い時期からフルHD対応をしていますが、すべてのモニターがフルHD以上というわけではありません。画面の大きさによって画面解像度のスペックが異なります。
テレビモニターのサイズと画面解像度の一般的なトレンドとしては下記の通りです。
・32型(高さ39.80cm×横70.80cm)以下 HD画質
・32~40型(高さ49.80cm×横88.50cm)までフルHD画質
・40型以上の大型モニターはフルHDから4K対応
ただしPCモニターの場合は24型でもフルHD対応など、テレビよりも高解像度になる傾向があります。特に高性能なゲーミングPCとセットで運用する場合はモニターにもハイスペックが求められるせいでしょう。
4.テレビ会議システムの画面解像度トレンドと最適な選び方
ここまでスマートフォン、タブレット、テレビ、PCモニターの画面解像度のスペックやトレンドについて解説してきましたが、最近はテレビ会議システムでもフルHD相当まで画面解像度を調整できる機種が増えてきました。
ごく少人数の会議を行うのなら、自分だけ相手の顔や資料が見えればよいですが、数十人・数百人が一枚のモニターを注視するのであれば、大画面が必要です。また、特に実際に製造した製品を画面で見せながら会議をする場合などは、より高精細な画像のほうが正確に品質を伝えることが可能です。
つまりモニターサイズや用途に応じた解像度が求められます。
フルHD対応のテレビ会議システムを購入すれば、パッケージに推奨スペックのカメラやモニターが含まれているケースもあります。
個別に準備することもできるかと思いますが、テレビ会議システムの通信速度の問題もあるので、システムやモニターだけを高性能にしても十分な性能が発揮されない可能性があります。クラウドサービスを使っている場合は、クラウドサービス側でフルHDの解像度に対応しているかも確認が必要です。最適なスペックを選ぶのならテレビ会議のサービス担当者と打ち合わせの上、決定するのが最適だと言えるでしょう。
また初期設備を必要としないWeb会議システムならすべて自分で設備を準備する必要がありますが、その際はフルHD対応のWebカメラ(数千円~)、フルHD対応のモニターも安ければ2万円未満で入手可能ですから大きな予算は必要ありません。ただし、PCのスペックやクラウドサービス側の仕様にも左右されますので注意が必要です。
5.画面解像度と画素数の違いとは
最後に混同しやすい画面解像度と画素数について解説します。
モニター画面には無数の点(ドット・ピクセル)が並んでおり、その点ひとつひとつがさまざまな色に変化することで画面上にさまざまな映像を映しだしています。
その点が縦×横に何個ずつ並んでいるか、というのが画面解像度で、合計の点の数が画素数です。
例えばiPhone XS Maxの画面解像度が2,688 x 1,242ピクセルというのは、縦に2,688個、横に1,242個の点が並んでいることを表しており、合計で約330万画素ということになります。
そして画面解像度や画素数と区別すべき用語として解像度があります。
画面解像度が縦横の画素を数値で表わすのに対し、解像度は表示領域(1インチ)に対する情報量の密度をdpi(dot per inch) ppi (pixel per inch)で表します。解像度は密度なのでモニターのサイズと比例しません。iPhone XS Maxの解像度は458ppiなので、1インチに458個のドットが詰まっているのです。つまり画素が高密度なディスプレイは高画質だと言えるでしょう。
以上、画面解像度、解像度、画素数に合わせてディスプレイ自体の大きさが分かればモニターの基本性能が把握できます。
ただしディスプレイ選びは奥が深いです。
画面の切り替え速度や色の鮮やかさ、光沢(グレア・ノングレア)、ブルーレイカット機能の有無、画面のフリッカー(ちらつき)、視野角、消費電力などさまざまな要素が複雑に絡み合っています。
単純に画面解像度や解像度がハイスペックだからといって、そのまま高性能なディスプレイとは言い切れません。ちょっと角度を付けたら見えなくなるようなディスプレイでは多人数で使えないのです。
スペック表を読み解くだけの基礎知識は必要ですが、最終的なディスプレイ選びには現物を見るのが一番です。テレビ会議に使うのなら画面解像度と合わせて広視野角のものを選びましょう。
※1記載の商品名、サービス名は各社の登録商標または商標です。
この記事の執筆監修者情報
監修者:エヌ・ティ・ティ・ビズリンク株式会社
NTTビズリンクは、企業向けデータセンターサービスを提供する会社として2001年7月にスタートしました。
その後テレビ会議多地点接続サービス事業などの統合により、お客さまのクラウド・アウトソーシングニーズに応える為に、統合的なICTアウトソーシングビジネスを展開してまいりました。 現在、設立以来培ってきたデータセンターサービスとテレビ会議サービスの運用力を強みとして、Communication&Collaboration SolutionsとData Center Integrated Solutionsという新たな事業領域のビジネスを展開しています。
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