遠隔臨場が普及するも、視認性の低さが課題
●従来は直接の立会検査を実施していたが、生産性向上や非接触の観点から「遠隔臨場」が推進されるようになってきた。
●「遠隔臨場」ではWeb会議システムを活用していたが、視認性が低いうえ、同時に写真を撮影したり映像を記録したりするのが困難だった。
架橋工事のほとんどは公共事業です。従来、施主である国土交通省は、職員が現場に出向いて「段階確認」や「材料確認」「立会」などを実施していました。しかし、生産性向上や非接触・リモート化に向け、現地に出向かずにWeb 通信を使用する「遠隔臨場」への移行が進められるようになってきました。
2020年5月には、国土交通省が遠隔臨場の「実施要領」(「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」及び「建設現場の遠隔臨場に関する監督・検査実施要領(案)」)を発表。コロナ禍の影響もあり、2020年度の実施数は全国で760 件だったのが、2021年度には約1,800 件と一気に増えました。現場への移動時間や立会に伴う受注者の待ち時間の短縮などの効果が確認されたこともあり、2022年度から本実施に移行し、すべての工事に遠隔臨場が適用されることとなったのです。
ただし、時間効率は向上したものの、実務上はスムーズとはいえない状況でした。現場の責任者である監理技術者の鈴木俊広氏は次のように話します。
「遠隔臨場は、工事情報共有システム(ASP)を活用して調書を電子上でやりとりします。そのうえで、発注者に現地の様子をリモートで確認してもらうため、Web会議システムを活用していました。ところが、そのときに写真を撮影したり、データ共有をしたりするのが困難でした。」(鈴木氏)
今や、Web会議システムは無料でもいろいろな製品を使うことができます。発注者のIT環境や希望に合わせて使い分けることはできますが、活用できる機能は限られるのが実情でした。そのため、写真やデータを別途記録し、発注者に送信する手間が生じてしまいます。しかもWeb会議システムの画面を通じての確認となり、撮影画面の操作ができないため、どうしても視認性が低くなってしまっていました。